能動的な学びのサポート

~ 野外体験学習の「ファシリテーション」から学校教育を考えてみました ~

 

令和元年の夏は、川遊びプログラム、キャンプ、ゼロ村オープンデイなどを開催しました。

 そして、団体利用では、毎年恒例となった NPO法人 子どもグリーフサポートステーションさんや新規の(公財)盲導犬協会さんの利用がありました。この二つの団体には、多くのサポータ(ファシリテータやスタッフ)の方が寄り添いイベントが行われました。

 

この二つの事例が「子どもたちの能動的な学びに必要なものは何か?」を考えるきっかけとなりました。



<視覚に不自由がある子の野外体験>

(公財)日本盲導犬協会 URL http://www.moudouken.net

視覚に不自由があってサポートが必要な子どものパカラッチョの利用(ワン!ぱくっ子サマースクール視覚障がい児向けサマーキャンプ)に関して。

 

受け入れ側のパカラッチョは、事前の予想として「目が見えないのに馬に乗ろうとするのか?」など、不安な要素がたくさんありましたが、子どもたちはこちらの不安をよそに「知ること」に関して貪欲でした。

 

「川の水」「その隣にある露天風呂のお湯」などそこにあるものを、サポータの言葉を聞きながら手探りで触れて知ろうと積極的でした。(動画の添付)

 

また、馬に乗りながら、川の音などを聞き取り「さっき行った川だ!」と位置関係を知覚しようとしていました。

お湯の温度をサポートを受けながら知ろうとしている様子。



<グリーフ(悲嘆)経験のある子の自然体験プログラム>

NPO法人 子どもグリーフサポートステーション URL  http://www.cgss.jp/index.html

1回開催されるされるパカラッチョでの自然体験プログラムに関して。

このプログラムでは、参加者が自分で遊びを選択して遊びます。ある遊びの場面で「怖い」と思ったとき、その子の心が委縮していく様子が独特でした。

 

不安になり心を閉ざそうとする局面から「でも挑戦しよう」と思う段階の間に、無意識の領域でサポータのバックアップが重要な役割を果たしていると思いました。 

 

例えば、乗馬プログラムの「馬上体操」のところで、「両手を広げてみて」と指示したときに、「やだ…怖い」という反応があったのですが、私の予想以上に表情が変化した子どもがいました。しかし、待っていると少しずつ両手を離すことができました。


<二つの体験プログラムから見える能動的な挑戦について>

両者の事例に共通していた点は、体験者とサポータの間に「信頼関係」の土台があって初めて能動的な挑戦が可能であったことです。

 

視覚障がいがある子にとっては、アドバイス(例えば、段差があるところなど)が適切でなければ、何も挑戦できなくなってしまいます。

 

グリーフ経験があり、何かに怖がっている子に対して「大丈夫だからやってごらん」と安易にアドバイスしたところで、「ムカつく」かもしれません。そこに聞く耳があるかどうかが大切で、本人にしかわからないのです。

 

野外体験学習のファシリテータは、「誰かに〇〇体験をさせたい」という気持ちを遂行するために、「対象者との信頼関係を構築するためどんな働きかけ方をしていくか?」が問われると改めて感じました。



<学校教育の現場について考える>

「学び」でも学校の教科学習はどうでしょうか?

1クラス35~40名の生徒との関係を「信頼関係」をベースに学びの環境を整えることができるのでしょうか? 

 

生徒は、先生や同級生、あるいは学習内容との相性がよければ、「信頼関係」が無意識の中にあるかもしれません。しかし、クラスの全員がそういった状況になるのは希だと思うのは私だけでしょうか。

 

むしろ信頼関係が構築できない生徒に対して、学校教育にある暗黙のデットライン「落ちこぼれになる」「一般常識の範囲外になる」「不登校になる」といった大人が意図して用意したのか、意図していないのか分からないこの境界線を越えないために、「各々がんばりなさい」といった(信頼関係とは別の次元で)マネジメントしようとしてはいないでしょうか。

 

そもそも、こういった環境下でアクティブラーニング(能動的な学習)ができるのか疑問であり、野外体験学習のファシリテータのノウハウを活かすべきであると思いました。 

 


また、近年の不登校児の増加から見ても、このデットラインによる生徒の危機感を高める効果が無くなっています。さらに、「不登校」という言葉の罪を訴える人が増加しています。「登校が当然だから不登校が問題となる」つまり、不登校児は、変なレッテルを張られ社会に居場所がなくなってしまう(=引きこもりになる)、という風潮に疑問を持ち始め、「別に学校なんて行かなくたっていいじゃなか?」というムーブメントが起こっています。

学校をゼロから考える会URLhttps://ameblo.jp/uyam531/entry-12479409350.html

 

 

以上のように、野外体験学習による子どもたちのサポートには、子どもたちの能動性を引き出す機能があり、既存の学校の特性を正確に理解したうえで、文科省の推進するアクティブラーニングを以上のような側面から発展させ、さらに学校を行かないことを選択した子どもたちの学びを守るために、まずは子どもと(学びを提供する)大人の「信頼関係」から育む新たな仕組みづくり(オルタナティブスクール)が必要だと思いました。


<今後のパカラッチョ>

パカラッチョは、この「子どもたちの能動性」を引き出した後、「どう展開するか?あるいは、各種関係者や団体へ引き継ぐか?」を模索する段階に入りました。

この活動をお手伝いしてくださる方を募集いたします。(有給で募集いたしますが「どうやって利益をだすか?」をパカラッチョの今までの利益の出し方から、さらにアップデートさせる方法を一緒に考えてくださる方を募集いたします。)